地方から就職したばかりの私は会社の寮住まい
気の合う楽しい友達はほとんどいない
寮には同じ境遇の同僚も多かったが
車を持てなかった私たちには
(自動車メーカーなのに なぜか寮生は1年間駐車場を借りる権利が無かった )
寮から半径2KMぐらいの行動範囲しか与えられなかった
(それ以上歩いていくと帰りが大変になる)
幸い繁華街から近かったので買い物や食事には困らなかったが
閉塞された空間に嫌気が差していたし
車を所有できる 地元から就職した同僚たちがうらやましかった
そんなころ 同じ課に配属が決まり 知り合った同期のS
彼は通勤には少し遠いが 車の所有が出来ないことを理由に
家から自動車で通勤をしているとの事だった
当時 彼が所有していた新車のガゼール 今考えても 最高にかっこいい車


なぜか気の合った彼は 休みになると毎週ガゼールで 寮まで私を迎えに来て
2KM圏外へ連れ出し 自分の地元の友人を紹介してくれた
6スピーカーの良質なメタルテープの音質に包まれ
助手席に座っていても 行きかう人から羨望のまなざしを送られていることを意識する
今考えると あのころは 彼がいてくれたおかげで 随分楽しい時間を過ごさせてもらった
何年かは 同課だったため親友と感じるぐらい親交は深まったが
彼は愛知へ転勤 私は2年後 地元の静岡へ転勤
まだ携帯は存在せず 通信は手紙と公衆電話の時代
それぞれの価値観を構築するとともに疎遠となってしまった
自動車を扱う経験を積むことに 夢中になっていた30歳代
それを生かし独立した38歳
仕事の難しさを痛感しながらも カプチに至った現在
今日27年ぶりに Sと偶然 連絡がとれた 同じように年を重ねたであろう
Sは電話の向こうで大変歓迎してくれ
昔話で取りとめがつかないほど話は弾んだ
相槌の打ち方 話の間合い 方言が当時のままだったことに感激
おろかしい若者の時代を振り返り 異次元の空間に入り込んだような
楽しい時間を過ごしました
あわただしく 過ぎていく毎日
時には 立ち止まって 過去を振り返ってみるのもいいかと・・・
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